第23話  ダンジョンを探索すると、知能が上がるかも?

ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。

第1章 初級探索者編

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第23話(その1)

 翌朝、雫斗がリビングに降りていくと、香澄とミーニャが食事の準備が出来るまでの間、ソファーで話をしながら寛いでいた。 

 「おはよう。香澄、ミーニャ、もう起きていたんだ、早起きだね」雫斗の声に振り向く二人と一匹。雫斗の肩に乗っていたクルモと香澄の肩と頭をせわしく移動していたモカが目を合わせた途端、互いにプイッと顔を背けてそ知らぬふりをする。 

 その仕草が可愛らしいので多分仲が悪いわけでは無いと思いたいが、同じ製作所で生まれた兄弟なので対抗意識でもあるのだろうか?。 

 此れから同じ家で暮らすことに成るのに、このままで良いか正直分からないが此の事は同じゴーレムの良子さんに丸投げすることにする。 

 「おはよ~~おにーちゃん。香澄ね、お兄ちゃんにお礼が言いたかったの。モカを連れてきてくれてありがとう~ね、大事にするね(^^♪」と笑顔で、頭に乗ってソッポを向いていたモカをムンズと掴み雫斗に見せてきた。 

 「お礼の言葉なら昨日貰ったよ。気に入ってくれて嬉しいよ」と雫斗は声をかけると香澄の頭をワシャワシャとかき回す。

 掴まれたモカは、”グエ~~”と言いながら潰されると抗議の声を上げるが、たかだか五歳児に握られて潰れる様な義体ではないので此処は無視することにした。 

 「モカも、香澄と仲良くなれた様で嬉しいよ」と雫斗が声をかけると。 

 「べつに、おいらご主人の事を気に入らない訳じゃ無いぜ。初めて会った時のおいら成りの愛情表現さ!!」とモカが答えると。 

 「相変わらずのへそ曲がりですね。昨日は香澄様に”チンクシャ”とか言っていませんでした?」とクルモがチャチャを入れる、それを聞いたモカが。 

 「ふん!!。優等生様には庶民のユ~~モアには縁がないらしいぜ。”好きです”、”愛しています”って言うだけが好意の表現だと思って貰っちゃーいけないぜ。世の中にはツンデレっていう高尚な表現が有るんだぜ」と言い返す。 

 「ふっふふ~~、へそ曲がりの変人(変ゴーレム?)の言い訳にしては的を射ていますね。じゃ~~あなたが私に対して言う嫌味も、私への愛情表現と受け取っても良いんですね?」とクルモが切り返す。 

 「けっ。これだからお利口さんとは付き合えないぜ。いいか世の中には本音と建て前っつ~~微妙な物事が存在するんだぜ。それを理解できない石頭じゃ~此れから苦労する事に成るぜ」とモカがクルモに忠告する。 

 漫才の様な掛け合いで、言い合いを始めたクルモとモカを、喧嘩していると勘違いした香澄とミーニャが二人を止めに入るが、雫斗は案外二人は気が合うのかも知れないと思い始めていた。それよりも驚愕したのはクルモとモカの知識の多彩さに唖然としていた。 

 クルモとモカはまだ此の世界に生まれて数日しか経って居ないのだ、それでこの世界の事をある程度理解しているとは、ゴーレムとしてのポテンシャルなのか、はたまたインターネットという知識の宝庫に接続できるAIとしての強みなのか分からないが、もしゴーレム型のアンドロイドが大量に生産されて、ある時人類に反旗を翻したとしたら、たちまち人類は駆逐されてしまうのではないかと朧気ながらも不安を感じてはいても、元来雫斗は楽天家である、気のいい隣人が出来たぐらいの感覚しか持ち合わせて居ない。 

 雫斗はモカと激論?を交わしているクルモをミーニャに預けて、「顔を洗ってくるね」と洗面所へと向かって行った。顔を洗い終えてリビングに戻ると、丁度朝食の用意が出来たみたいで皆で食卓に座って朝食を食べていた。 

 「おはよう母さん、良子さん。あれ?父さんは居ないみたいだけど、もう畑に行ったの?」と雫斗は不在の父親の海慈の事を聞いてみた。現代の農業はAI搭載の農作業専用の機械が大まかな作業をこなすとは言っても、朝が早い事には変わりがない。 

 「そうね、収穫が近いから気になるみたいね。それより早く食べて頂戴、今日は朝一で山田さん達との会議が有るんだから」と悠美は早く食べろと言ってきた。 

 雫斗は慌てて自分の席に座ると、「いただきます」と言って食事を始める。途中で今日星士斗先輩に鑑定や保管倉庫のスキルが有る事を打ち明けてステータスが存在している事を話すのを思い出して、悠美に聞いてみた。 

 「母さん、保管倉庫のスキルと鑑定のスキルの事だけど、まだ緘口令は解けないの?」雫斗の問いに「どうしたの?」と不思議そうに聞く悠美。 

 雫斗は先日の星士斗先輩とのやり取りを話して、このままでは先輩の締め技の餌食に成りそうだと訴える息子の悲壮感漂う顔を見て吹き出すと、呆れた様に言う。 

 「学校の生活も大変ね、・・・いいわ。もうそろそろスキルの存在を発表するころだし、話しても問題ないわよ、そもそもうちの村では公認の秘密としてまかり通っているわよ」と身も蓋も無いことを言いだした。 

 「うちの長老達の事だから分かるでしょう?、老人会のレクレーションとか言って、年寄り連中を集めてスライム狩りに勤しんでいるわよ」と悠美が困ったものだと、呆れた様に言う。 

 最近の村のダンジョンの一階層のスライム討伐の予約が、軒並み一杯だったのはそう言う事だったのかと理解した。確かにこの村の人口を考えたら、接触収納の取得をするにしては三ヶ月が過ぎて今頃ピークが来るわけがない。 

 口止めされていた事を律儀に守っていた雫斗にしてみたら馬鹿みたいな話しだが、ここに来てダンジョンに入り浸っていた弊害が出てきた。つまり現在の世間の動きが分からないのだ、腑に落ちない表情の雫斗に悠美が言う。 

「星士斗君も頭のいい子だから、爺様達がダンジョンを徘徊し出したのを見て、何かを感じたのでしょうね。とにかくこの村に関してはスキル取得の条件を解禁する事にするわ」

 とあっさりと雫斗の当面の問題を解決した、昨日寝入るまで悶々と星士斗先輩にどう言い繕うかと考えていたのがバカみたいだが、取り敢えずこれで障害がなくなった事にホッとして急いで食事を終えて家を出る雫斗だった。 

  

第23話(その2) 

 雫斗が学校に着くと、早く家を出た事もありまだ誰も来ておらず自分の机に座ってクルモとまったりしていると、今年中学に上がってきた薗田すみれと岩貞由香里が連れだって教室に入ってきた。 

 雫斗の転がした鉛筆を、クルモがジャンプして捕獲するという何とも変哲もない遊びに興じている二人を見て。 

 「きゃゃ~~~!。雫斗先輩!!、その子どうしたんですか?」と岩貞由香里が飛びつくように机に齧りついてクルモを見つめてきた、叫び声にビクッとして動きを止めたクルモと至近距離で見つめ合う由香里。雫斗は彼女の性格を知っているので、突然の叫び声にも平然として受け答える。 

 「猫先生と同じゴーレム型のアンドロイドだよ。ただ魔核自体が物凄く小さいので小型化できたんだ」と取り敢えず説明を端折って二人に話をすると。 

 「えっ?ゴーレムの魔核って一種類じゃ無かったんですか?小さな魔核って初めて聞きますけど?」と疑問を投げかける園田すみれ。最近、探索者登録して二人でダンジョンに入り始めている様で、色々調べているみたいだ。 

猪突猛進の由香里と石橋の安全を確かめるのに叩きすぎて亀裂を入れるほど用心深い園田すみれは、同学年で気が合うのか、いつもつるんでいる。 

 「今まで、口止めされていて言えなかったけどね。今朝お袋から話しても良いって許可をもらってね、クルモの事も説明するのに困るから話していい事に成ってね。多分今日の放課後に星士斗先輩から呼び出しが有るはずだから、その時にまとめて説明するね」

 すみれと雫斗が情報交換している横で見つめ合う二人。まるで真剣勝負如く、お互いの隙を伺っていた由香里とクルモだが、根負けしたのは由香里の方だ。 

 「雫斗先輩。この子触っても良いですか?。名前は?」と矢継ぎ早に聞いてきた、どうやら触りたくてうずうずしていたみたいだ。 

 「名前はクルモって言うんだ。由香里ちゃん掌を上に向けて近づけてごらん」と雫斗の言葉を肯定と受け取ったクルモが、言われた通り近づけてきた由香里の掌にぴょんっと飛び乗って。 

 「ご主人のご学友の方ですか?。クルモと言います、よろしくお願いします」と丁寧に挨拶すると。 

 「くぅ~~~。カタイ、かたいよクルモちゃん!!ここは。”クルモだぴょん~~、シズちゃんのお・と・も・だち?。よろしくね~~”ってか~~ルく言うところだよ。でもかわ~~~いい、お持ち帰りしたいい~。でも先輩のモノだし。ああっ?ゴーレムって自我が有るんだった、私になついてくれないかな~~、・・・・・」と危険な思考の海に飲まれだした由香里に、若干引き気味のクルモが自分の身の危険を感じて”このままで良いのか?”と雫斗をチラ見する。 

 「こらこら、クルモはダメだよ僕の友達だからね。由香里ちゃんも自分で魔核を取ってきて作って貰ったらいいよ」そう言う雫斗に驚いてすみれが聞いてきた。 

 「えっ!、この子の魔核って雫斗先輩が取って来たんですか?。・・・ちなみにこの子のお値段っていくらくらいだったんですか?」雫斗がクルモを作って貰った値段を遠慮がちに言うと、我関せずとクルモを人差し指で撫でようとするも、クルモにブロックされて撫でられずに攻防を続けていた由香里が。 

 「えええ~~、そんなにするんですか!!」と絶望的な声と共に落ち込んでいく。 

 「まー、試作品だからね、小型化にかなり苦労したみたいだし、量産化されるともう少し安く成るとは思うけどね。ちなみにだけど、魔核自体は一階層でも取得出来るよ」

 雫斗が今後の展望を話すといくらか安心したようだが、どの道まだダンジョンが出来て5年しか経って居ないのだが、此の世界の変わりようでは後2~3年で社会の仕組みががらりと変わっても不思議ではない。 

 そうこうするうちに、百花達も登校してきてクルモの義体の事や今後のダンジョンの在り方について盛り上がったのだが、授業が始まる事も有り残りは放課後で話し合う事に為った。 

 そして放課後、予想通り星士斗先輩が呼んでいると三年生の芳野冬美が迎えに来た。雫斗達は、一年と二年の全員でぞろぞろと三年生が使っている教室へと連れだって移動してきた。 

 「おいおい、どうしたんだい!。全員集合とはただ事じゃ無いな」と下級生全員で来たことに驚いた星士斗は多少警戒して聞いてきた。

 母親からすべて話しても良いと許可を貰っている雫斗は多少余裕があるのか、警戒している星士斗を茶化す。 

 「ふふふっ・・、先輩方の圧迫尋問に対抗するために全員できました。これで気持ちで負ける事はありませんよ!!」と言った途端、後頭部をハタかれる。 

 「煽って茶番を誘うのは止めなさい。この後ダンジョンに行くんだから早く終らせないといけないでしょう」と雫斗と星士斗の楽しみをつぶしにきた百花。 

 チームSDS(雑賀村ダンジョンシーカー)のメンバー全員がようやく鑑定のスキルを取得して、昇華の路を探し当てる事が出来る様になっていたので、本音で言えばこの様な報告会に参加する暇があるならダンジョンへと入りたいのだろうが、此処は自重した形になる。 

 頭を叩かれて、星士斗との茶番をつぶされた雫斗だが、時間が惜しいのは雫斗も同じなのでさっさと始める事にした。 

 雫斗の肩に乗っていたクルモを瑠璃先輩が目ざとく見つけると、今朝の由香里と同じ状態に成り、質問攻めと触りたい攻撃で多少の時間のロスは有ったが、取り敢えず話を終えてからと言う事で進める事にした。 

 「今朝支部長から話しても良いと許可を貰ったので全部説明しますから、ちょっと待っててくださいね」と言いながら雫斗は黒板に今まで分かった事柄を書き出していく。 

 最初はカードスキルを書き出していき、接触収納のあたりでは皆が知ってる事も有りざわつきはしないが、スライム1万匹の討伐でスライムの固有スキルである保管倉庫と物理耐性が取得できる可能性に言及した辺りでががやがやと騒がしくなる。 

 ライム10万匹の討伐でカード鑑定使えるようになる事や、一階層に居るベビーゴーレムとカメレオンサラマンダーの存在と、鑑定スキルで見つける事の出来る隠し通路(昇華の路)の辺りでどよめきとなる。 

 その事は雫斗の予測の範囲なので最後まで書き出して「何か質問は?」と質疑タイムに突入していく。 

  ざわついていた教室内が一瞬静寂を取り戻すと、「「「はい!はい!」」」と全員が一斉に手を上げる、我先にと勝手気ままに質問してこないのは教育のたまものではあるが、自分を指名しろとの気迫が半端ではない。取り敢えず呼び出した本人から指名する「はい星士斗先輩どうぞ」。 

 「このカード鑑定とは鑑定スキルと思っていいのかな?」と一番気になる事柄から聞いてきた。雫斗は予測して居たので今まで分かった事も含めてどの様に説明するか考えてきていた。 

 「これは僕の所見なんだけど、Dカードを取得をすることでダンジョンでの活動の初歩的な技術の習得が出来る様になるのだと思う。収納にしても鑑定にしても無いより有った方がダンジョン攻略の難易度が段違いだから。ちなみにだけど良く分からないというのが今の所の見解です。鑑定のスキルの取得自体はスライム10万匹で間違いないですが、覚醒するとなるとカードを透かして見るという条件が居る様です。鑑定のランクアップと融合はまだ良く分かって居ません」と雫斗が考えなしに爆弾発言したものだから、教室内の喧騒が一層激しくなる。 

 「どういう事よ?。 鑑定のスキル自体が変化するって事」と瑠璃先輩が驚いて聞いてきた。 

 「それも良く分かって居ません、僕の場合だと鑑定のスキルと気配察知のスキルが合わさって魔物を直接見る事で鑑定できるようになりましたが、物や人物は相変わらずカード越しに見なければ分かりません。もしかしたら他の人は違う形でスキル同士が融合するかもしれません。とにかく検証はこれからなんです」と雫斗が言うと。 

 「確かに、まだ分からない事だらけだと言う事は分かった、しかし発動する条件は同じだと考えていいのかな」と星士斗先輩が確認する。 

 「それは検証済みです、百花も弥生も恭平も、保管倉庫、物理耐性、鑑定と僕がスライムを倒して取得したスキルはすべて習得できましたから。ただカードを使った収納もそうですが最初は使い勝手が良くありません」と雫斗。 

 「そうね、カードの収納だと触って無いと駄目だし重量にも制限があるわね、カード越しに見る鑑定も煩わしいわね」と百花が言うと、残りの教室に居る人達も納得した様に頷く。ここに居るメンバー全員が接触収納を使えるのだ、しかし鑑定が出来ると言う事が今まで無かったわけで、それが出来るだけで凄い発見だと他の人は思っているのだが。 

 「後カード鑑定だけど、自分の鑑定は別にして、他人を勝手に鑑定できません。これはうちの家族で確かめたんだけど、自分が鑑定のスキルを所持して居る事を伝えて、相手が鑑定されることを承諾していないと使えないみたいです。つまり知らないうちに鑑定される事が無い様に出来ているみたいなんです。後カードを取得していない人はステータスが無いのか見る事が出来ないみたいだね」と雫斗が続けて言うと、カード鑑定を取得しているチームSDSのメンバーと他の人で検証が始まる。雫斗は事が収まるまでの間、家族で行ったカード鑑定の検証を思い出していた。 

第23話(その3) 

 両親に鑑定のスキルが有る事を打ち明けたその日は、家族間での鑑定の検証を始めたのだが、如何せん両親とゴーレムの良子さんに加えダンジョンカードを取得していない香澄では検証の精度は限られる。その日は鑑定することを相手が承諾していないと、相手のステータスが見えない事と、カードを取得していない香澄は鑑定してもステータスが出なかったことくらいしか分からなかった。 

 後日赤の他人を勝手に鑑定するのは憚られるので、家のじ~様である俊郎爺さんで試した所、やはりステータスが表示されなかった、カードを向けられてぶつぶつ唱えている孫を見咎めて。「なんじゃ、わしを鑑定しとるのか?」と聞いてきた俊郎爺さんに驚いて聞いてみると、どうやら母親の悠美に長老会として相談を受けたとの事だった、ちなみに相手に黙って鑑定しても効果は無いことがこの時分かったのだ。 

 「ねえねえ、私を鑑定してみて」と野島京子一つ上のが恭平に話しているのを聞き我に返る雫斗。しかしそれを聞き咎めた百花が止めに入る。 

 「やめた方が良いですよ、京子先輩。鑑定されると自分のスリーサイズまで知られてしまいますよ」と諭すと、「それはいやね~」と京子が自分の体を見て躊躇する。 

 そのやり取りを聞いていた雫斗は、カード鑑定を取得したその日、百花からシートアッパーを顎に貰った事を思い出して無意識に顎を擦っていると、それを見咎めた百花が「何よ?」と憤るが、雫斗は「べつに、・・何も・・・」と視線を外して言葉を濁す。 

 「カードを使った鑑定はある程度わかったが、そもそも鑑定のスキルとは何だい?しかも複数あるみたいじゃないか?」と、雫斗と百花のやり取りを不思議そうに気にしながらも星士斗が雫斗に確認してくる。 

 「僕も其れに関しては良く分かっていないんです、多分ランクアップのしたせいだと思うんですけど、スキルは使うと成長していくみたいなんです」雫斗にしてもまだ分からない事ばかりだ。一人で検証するにはどうしても無理がある、ここは他の人がスキルを取得して確認して行くしかない。 

 そうなのだ、カードに表示されるスキルには数字が付いているのと無いのとに分かれている、その数字が上がるに従ってスキルの使い勝手が良くなっていくのはスキルを使ってきた雫斗の心からの実感である。 

 当然、百花達にもカード鑑定から鑑定スキルが使えるようになった状況を自分の考察とヨアヒムのアドバイス?を交えて伝えているが、察知系のスキルと鑑定の相性が良いといわれても良く分からない事に変わりはない。 

 「しかしここ最近のダンジョン攻略の新発見には驚かされるな。しかも一階層で全てが雫斗が見つけた事だとはね」星士斗が褒めると。 

 「だいたい、スライムだけを倒そうなんて他の人は考えもしないわ、しかもその事でスキルの取得の幅が広がるなんてとんだ盲点よね」瑠璃が、以前百花が言っていた事と同じことを言う。 

 「そんな事よりステータスよ、どうなのやっぱり学力に影響は有るの?」と聞いてきた、雫斗が話した内容に驚愕して目的を忘れていたが、ようやく思い出した様だ。 

 「その事なんですが、確かにここに書いた様にステータスの表記に知力の項目は有りますが、それが直接学力と結びつくかというと良く分かりません。アルファベット表記ですがAが最高なのかさえ分からないんです、ただ言える事は感覚として記憶力や理解力は上がっていると思います」と雫斗は正直な気持ちを伝えた、感覚的な事ではあるが、憶測だけよりかは良いと思ったからだ。 

 「そうね、私も以前より学力テストの順位が上がったわ」と百花も肯定する、恭平や弥生も同じ気持ちらしく頷いている。 

 「な~~、言った通りだろう。やっぱりダンジョンでステータスを上げた方が試験勉強には良いって」と星士斗先輩が嬉しそうに話す。 

 「何を言っているの、雫斗達はちゃんと勉強しているから学力が上っているのよ。貴方はダンジョンでステータスを上げたいだけでしょう?それだと受験勉強にはならないわ」と瑠璃先輩がダメ出しをする。確かに下地があって学習能力が上っても、勉強しなければ意味がない。頭が良い=勉強が出来るとは限らないのだ、学習とは文字どおり学ばなければ身に付かない。 

 「そうは言ってもよう。このままだとじり貧だぜ」と原因は星士斗先輩の学力の低さから、来年受験する予定の探索者養成学校の試験に受かる見込みがない事なのだが、星士斗先輩がさも自分には関係のない事のように言う。 

 「分かっているわ、星士斗は勉強する時、集中力が続かないから、これまで時間が限られていたけど、此れからはダンジョンで息抜きが出来るから、勉強する時の集中力も上がるでしょう。今日から放課後ダンジョンでスライムを倒した後、私か星士斗の家で受験勉強しましょう」とこれまでの受験勉強に加えて新たにダンジョンの探索を追加する事を宣言する瑠璃先輩。 

 「えええ~、ダンジョン探索と受験勉強を一緒にやるのか?」星士斗の思惑とは違う時間割を決める瑠璃に、絶望の眼差しを向ける星士斗に対して。 

 「当たり前でしょう、貴方自分の置かれた状況を理解しているの?。合格が絶望なのよ、千いえ万に一つも可能性が無いのよ、此処はダンジョンで知能と集中力を上げるしか受かる見込みが無いのよ。藁よりましでしょうけど、縋りつく事が出来るものなら何でも掴まなきゃいけないわ」と真剣な表情で瑠璃が言い放つ。ひどい言われようだが、これまで星士斗の勉強を手伝ってきた瑠璃の本音らしい、彼がどれだけ受験勉強が・・・いや勉強自体が苦手だったのかが良く分かる台詞だった。 

 取り敢えずスライムを倒さなければ始まらないので、今日は全員で沼ダンジョンへ向かう事にした 

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