第8話  ダンジョンの、ダンジョンによる、ダンジョンの為の、お約束? 

ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。

第1章 初級探索者編

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第8話(その1)

 百花達3人は恭平の父親の浩三に連れられて3階層へと向かって歩いている、とはいっても完全に舞い上がっている百花が先導している形になっているが、浩三は何も言わず百花に斥候を任せている。 

 「じゃー何かね、スライムが簡単に倒せるというのかね?」

 と浩三が興味を示して聞いてくる。 

 「そうなんです、花火に点火してスライムに飲み込ませるだけ、あまりに簡単で拍子抜けしちゃいました、あれならいくらでも倒せますね。だけどスライムでしょうドロップがしょぼくて、百花が飽きてきちゃって今変なテンションなんです」

 と弥生がこれまでの経緯を話している。 

 その百花は先頭をずんずん進んでいく、2階層で出てくるケイブバットを木刀で叩き落とし、ケイブラットを足で踏みつけて、後ろで談笑している3人を気にした風もなく戦車のごとく歩いていく。 

 ようやく3層へと到着した。階段の洞窟を抜けると目の前に広がる草原、奥の方に森の木々が群生していて、空には青空が広がり雲がたなびいている。 

 地上であれば何処にでもある風景だが、ここは地下のダンジョンの中だ、たかだか5メートルほど降りた洞窟の階段の先が、高さ数十キロメートルは有ろうかという広い空間だとは、まさしく不思議の国ダンジョンである。 

 不思議その1、降り注ぐ日の光、しかし有るはずの太陽は見えず。ご丁寧に雲の影まで再現している、しかも夜や気象の現象で有る雨や霧など地上の天気を事細かに再現する、もちろん四季も同様だ。 

 不思議その2、空の高さ。ドローンを飛ばして見たところ上昇限度は100メートル前後、それ以上は進まなくなる何かにぶつかると言うわけではなく、それ以上はいけなくなる見えているのに行けないとはこれ如何に。 

 草原に降り立った一行は呆けた顔で周りを見回す、初めてではないがいつ来ても圧倒されてしまう景色だ、浩三が皆を見回して。

 「何度か来ているから分かるとは思うが決して油断しない事、特に深い藪には魔物が潜んでいることが多い、3層までのダンジョンで熊や豹などの大型の魔物はいないが、キツネや兎を甘く見ると痛い目に合うよ」と注意する。 

 「解っているわ、ダンジョンはダンジョンだもの、油断なんてしないわ、それよりトレントなんて初めてだわ、どうやって狩るの?」

 と百花が聞いてきた。。 

 「そうだね中に入ると危ないから、割と安全な階段下で話そうか」

 と浩三が車座に座るように促す。 

 「ダンジョンの魔物はリポップする、リポップする瞬間を見た人はいないが、これは常識だとされている。なぜかというと子供の魔物が確認されていないからだ、もし子供の魔物が確認されると常識が覆るね、ここまではいいかな?」

 浩三が見まわして確認を取る。 

 「そうね大体聞いていた事とおんなじだわ」

 と百花が代表して答える。 

 「さてこれからは安全の確保についてだ、君たちはまだ探索者としての立ち位置を確保しているわけじゃない、1年間はノービスつまり探索者としての経験を積むための準備期間だ」

 それを聞いて百花が鼻を鳴らすが構わず続ける。 

 「その期間を終えると中層や深層への探索に行くことになるだろう、その時安全の確保は大事になってくる、見ての通り階段下もしくは階段の上の空間には魔物がいない、今まで階段を使った、つまり降りたり登ったりした後だが挟撃された記録がない。・・それにモンスタートレイン、魔物から逃げる際ほかの魔物にも追撃されて、大量の魔物に追い回されることだが、命からがら階段を上がったパーティーの報告では魔物の階層移動は確認できなかったそうだ、つまり魔物は制約があるのか分からないが階層間の移動ができないわけだ、その事からこの周辺は安全だとされている、確証はないが容認されていると言う事かな」

 と一息ついて皆を見回す、とりあえず真剣に聞いているみたいだ。 

 「次は洞窟での安全はどう確保するか、さっきリポップしている瞬間を見た人はいないと言ったが、裏を返せば人のいるところではリポップしないとも言える、洞窟を通ってきて分かるが通路と広間で構成されている洞窟はその広間を制圧すれば、とりあえず安全を確保できると言う事だ」

 そこまで言ってのどを潤して。

 「何か質問は?」と聞いてくるので。 

 「じゃー、入り口を一つに限定できる突き当たりは安全と言う事ですか?」

 百花が聞いてくる、いい質問だという様に笑いながら。

 「一概には言えないね、例えば移動して来た魔物が弱い魔物なら倒せるからいいが、手に負えない魔物だとどうする?」そう言われて。 

 「あっ!、逃げ場がないわ!!」

 と百花。 しまったという表情で顔をしかめている。

 「状況に応じて対応することだね。さてトレントだが、魔物には強みと弱点がある、分かるかな?」と浩三が聞く。 

 「スライムの先の尖ったものに弱いことと、打撃に強い事みたいな?」と弥生が言うと。 

 「そういうことだ、トレントも火と斧に対して強い嫌悪感を持っている。例えば斧を見せると震えあがって枝を飛ばしてくる、3階層のトレントはモドキと言って枝飛ばしも大したことは無い避けることは簡単だ、しかも6階層から出てくる本物のトレントの様に動ける訳じゃない、枝を飛ばし終えたトレントモドキは無防備になる、そこで顔の額のところにある魔核を壊せば倒せるわけだ、簡単だろう?」

 百花達は顔を見合わせる。あまりに簡単に倒せる魔物に、物足りなさを感じていた。 

 「ここでは冒険は期待しない方がいい、3層の最強魔物はウルフ系だが単独、多くても2匹でしか襲ってこない、君たちにとって脅威には成りそうに無いな、まー中層の魔物を倒す予行演習だと思って頑張るんだんね」

 そう言って立ち上がる、臨時の講習は終わったようだ。 

  

第8話(その2)

 浩三は背中に背負った荷物袋から、クロスボウを取り出して弓を広げて固定する、そして短弓を持っている弥生に話しかける。 

 「草原にいるキツネや狸、ウサギといった魔物は警戒心が強い、洞窟の蝙蝠やネズミといった魔物と違って、むやみに襲ってこない。勝機を待ってじっと潜んでいる、しかも弓系の武器には特に敏感だ。だから弓の射程距離では弓の引き絞る音でさえ警戒する、極力弓は見せず素早く放つことを考えて行動しなさい」

 「貸してごらん」とクロスボウと短弓を交代して、矢を3本受け取ると片膝をついて、20メートルは離れている丸太を指さして「見ていてご覧」と言うが早いか一本の矢をつがえると、残りの矢は弓の引き手の指に挟んだまま、狙いもつけず、”バシ!”、”バシ!”、”バシ!”と矢を放つ。 

 矢は吸い込まれるように一か所に刺さったようだ、「やってごらん」、と短弓を渡された弥生はプルプルと震えている、あまりの早業に自分には無理だと訴えているのだ。 

 クロスボウと短弓を交代した浩三は、弥生に今披露した短弓の使い方をレクチャしている、弓の握り方、矢のつがえ方、狙うときの呼吸と放つタイミング、次の矢をつがう時の指の使い方を詳しく教えている、一通り教え終わると少し離れて見守る。 

 「最初は何時もどおり狙いをつけて、同じ所に当てるつもりで、ゆっくり矢を矧でいいから」

 とアドバイスをする。 多少のぎこちなさは有るけれど、矢は時間をおいて丸太に突き刺さる。 

 「よし!。後は鍛錬あるのみ動かない的だけじゃなく、動く的でも練習するように」と浩三さん。 

 「動く的?」と疑問形で聞く弥生に。

 「丸太では重いか。・・・枯れた木の枝に藁を巻き付けて、恭平に引かせたらいいよ」

 と恭平のお父さん。 

 「えっ!!、僕が的になるの?」と戦々恐々の恭平君。 

 「んん?、長いひもを括り付けて引っ張ったらいいよ、要は工夫だよ」

 とお前は馬鹿かと、にらみつけるお父さん。

 「あっそうか~~」

 と安心した恭平だが睨みつけられて落ち込む、体は大きくてもまだまだ子供である。 

 クロスボウの弦を張り準備の出来た一行は森を目指して、浩三お父さんを先頭にゆっくり歩き始める。 

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 そのころ雫斗はおいて行かれて涙目になりながらも、皆を見送った後どうしようかと考える。水中花火でスライムを楽に倒せることは分かった、あまりに楽すぎて疑問が残るが、それは置いといて。 

 「ジャンジャジャン!!、此処に取り出しましたる、この付箋紙」

 と言葉に出してから”はっ”と我に返る、周りを見回し顔を赤らめながら”まー、いいや”と続ける。 

 どうやら、仲間に置いて行かれて精神状態がおかしな方へ向っているようだ。要するに落ち込んでいるのか、それとも無理やり気持ちを奮い立たせて舞い上がっているのか、自分でも分からない状態なのだが、本人は気が付かない。 

 「このDカード。出したり消したり出来るこの不思議なカード、このカードを検証せずして、ダンジョンを知ることが出来ようか?」 

 Dカードを右手に持ち左手に付箋紙を持って、演説をしていたが、声に出すと冷静になってくる。 ”あほか俺は”、と思い直し以前試した事を思い出す。 

  

第8話(その3)

 Dカードを取得した時にいろいろ試した、当然出したり消したりできるのだから収納に違いないと、ほかのものでも試した。鉛筆、ペン、消しゴムと学生の必需品に始まり、スマホ、リモコン、物は試しと冷蔵庫まで。 

 ことごとく試したが、当然誰も収納出来ないのだから出来るはずもない、仕方なしにずーとDカードと睨めっこをしていると軽いことに気が付いた、いやそもそも重さがあるのか?。 

 持っている手から離す事が出来ない為、計量器で測ることが出来ないが、多分普通のキャッシュカードと同じ重さだと思えた。そこでカードよりも軽いもので試そうとお母さんの使っている付箋紙を持ち出してきた、黙って持ち出したが後で返せばいいやとそのまま自分の部屋で実験開始。 

 まずはカードより軽いであろう付箋紙をカードに張り付け消してみる、他人が触る事が出来ない事から、心配していたが一応貼り付ける事は出来るが・・・・。カードは消えて付箋紙はひらひらと落ちてきた。 

 ”くそう!!”、ともう一度試す、・・・・やっぱりひらひらと落ちてきた。”駄目か”と 何度も繰り返すうちにふと、カードと一緒に一瞬消えるが、それから弾かれた様に現れて、ひらひらと落ちてくる様な気がした。それでも何度も何度も試すがどうしても消えてくれない、やっぱり気のせいかとその時はあきらめたが、どうしても気になって仕方がなかった。 

 探索者カードを取得して、自由にダンジョンに入れる様になったときそのことを思い出して、試してみようと付箋紙を買ってきたのだが、雫斗自身上手くいくとは思っていない。 

 「さて?どうなることやら」

 とカードに付箋紙を一枚張り付けて、消してみる。”あ~~ら不思議、カードは消えたけど付箋紙はこの通り”とひらひらと落ちてくる。・・・・付箋紙を探すが見当たらない???。 

 「えっ?消えた、どうして?」

 と、自分が消すために試したことを忘れて、ぶつぶつ言いながらグルグル辺りを探し始める。 傍から見れば怪しい人である、それでも信じられなくてしばらく落ちているはずの付箋紙を探しているが、”カードを出して見ればいいじゃん”と気が付く。 

 付箋紙の張り付いたカードを思い浮かべると、出てきましたDカードに張り付いたままの付箋紙が、しばらくカードを持った手をぶるぶるふるわせながら歩き回っていたが、冷静さを取り戻した雫斗はその場に胡坐をかいて座るとふと周りを見回した。 

 ”やばいダンジョンの中だ”と思い出した雫斗は安全を確認すると同時にとりあえず落ち着けと、背中のリックを下ろし水の入ったペットボトルを取り出すと水を飲んで気持ちを落ち着ける。 

 しばらくして落ち着いた雫斗は消えてしまったカードを出現させる、当然だというように手の中に付箋紙の張り付いたカードが現れる、雫斗はカードに付箋紙をもう三枚ほど重ねて張り付けて消してみる、やはり消える、出して見る、出てくる、何度か繰り返しているとふと別々に出し入れできるかやってみる。 

 結論から言うと出来ました、自由自在カードだけだろうが一枚の付箋紙ついたカードだろうが、二枚の張り付いたカードだろうが、付箋紙だけだろうが、イメージどおりに出せることが分かった。極めつけは付箋紙を横にずらしてカードに張り付いるイメージをしても出し入れできたことにはびっくりしたが。 

 ついでに言うと手に持っていた付箋紙の束も出し入れできました、慣れてくると他の物で試したくなってきた、隣に置いたペットボトル、消えません ”どうして?”と捕まえようと指が触れるとパッと消えた、すると頭の中にペットボトルのイメージと、ばらばらの付箋紙4つと付箋紙の束のイメージが浮かんでくる。 

 ペットボトルを手に持つイメージをすると手の中にペットボトルが現れる、すると頭の中のペットボトルのイメージが消えた、 

 ”なるふぉど”、・・・間違えた”なるほど”、手に触れていないと収納出来ないのか?・・・それならともう一度ペットボトルを出現させて(かなり手馴れてきた)、目の前に置き何も触れずに念じる ”消えろ”” 消えない、指先でペッボトルの蓋に触れる、消えた!!、そのまま地面を見つめてペットボトルを置くイメージをする、出てこない人差し指を前に出し蓋に触れているイメージをする、出現したとたん落っこちて地面に転がる、”イメージすると何でもありだな”と思いあれこれ試す。 

 結局取り敢えず分かったことは、体に触れていたら何処でも出し入れ可能だったこと、驚いたのは着ているズボンの上にも出すことができた事だ、どうやら着用しているものは体の一部と見なされる様だ、そこで考えた”着ている服も出し入れできるんじゃないかと”、自分の着ている服を収納しようとして、ハッと気が付いた”こんなところでスッポンポンになったら、変態じゃないかと”ぶんぶんと頭を振ってイメージを吹き飛ばす。 

    

第8話(その4)

 

 ”危なかった!!、もう少しで何かに目覚め・・・ちがう!!!心に傷を負うところだった”。・・・・スッポンポンを回避した雫斗は後はどれくらい入るかな?と周りを見回す。 

 目に入ったリックサックこれ位ならと触れて収納・・・できない、なぜ?。”リックサック位収納できないなんてしょぼいな~”と思いながら、リックサックの中身を個別に取り出してに収納に入れ始めた。 

{スマホ入った}、{メモ帳入る}、{ボールペン入る}、入れるたびに、頭の中に入れたものがイメージとして残る。どんどん入れていく、{サンドイッチ入る}、{水中花火の箱入る}、{もう一つの水中花火の箱入らない}。 

 ”えええ??これだけしか入らないの”と慌てる重量にして1キロも無いぐらいか?、”ひでえ~使い物にならね~~”。落胆して収納出来なかった水中花火を持っていない手で、リックサックをもち上げ様としてはずみで収納してしまう、いきなり消えたリックサックの重さに、加減できずにバランスを崩して盛大にコケてしまう雫斗。 

 倒れたことにパニクッてしまい、慌てて起き上がると処に消えたと周りを探すと、暫くして収納出来たのかと気付いた時、頭の中にリックサックのイメージがあった。肩ひもを掴んだリックサックをイメージ出て来た、もう一度収納入った。 

 訳が分からず入らなかった水中花火の箱を見つめる、”そういえばこの箱、百花がいらないって渡してきた箱だ”、思い出してみて腑に落ちた、収納するのに明確に所有者を限定するようだ。 

 ”なんちゅう仕様だ所有者を識別するのか? でも考えたら当たり前か、なんでも収納出来れば、窃盗のし放題だもんな~~”と考えを改める。 

 取り敢えず仕組みなんか考えても解らないので、収納したリックサックに意識を向ける、リックの中身は何かな? と意識すると入っている物が分かる、タオルを取り出す・・・出て来た、タオルをリックに入れる・・入った、リックを取り出す・・当然出て来た、そのリックから蓋を閉じたままタオルを取り出すイメージ、出来ない。 

 さっき収納したサンドイッチをリックの中に・・入らない、リックの上は?出て来た、”なるほどね収納したものは認識の範囲だから中身も分かると、一旦取り出すと認識の範囲外だから中身までは分からない、中に所有者以外の物があると全体を所有物と見なさない”そんなものかと納得した所で、お腹が鳴った。 

 リックの上に置かれているサンドイッチを見て腹の虫が泣いた様だ、そういえばお昼を食べていないことを思い出した、収納からスマホを出して時間を見る。 

 ”これ便利だわ”と思いながらスマホの画面を見るが、その時ふと考えた、これ時間当たっているのか?収納に入れっぱなしだった事を思い出したのだ。 

 スマホのタイマーを10秒間にしてスタート、すかさず収納する「1,2,3,4・・・」、カウントを数えながら10秒経ったぐらいに、頭の中でベルが鳴り響く、「ぎゃやや~~」。 

 慌ててスマホを取り出す、震える手でベルを止めて呼吸を落ち着ける。 

 ”はあはあは・・・なんて・・音だ”、まだ頭の中で鳴り響いている、気持ちを落ち着けて今度はバイブにしてタイマーセット、スタートして収納する、自分でカウントを数えながら身構える、10秒後振動を感知、取り出してタイマーを止める。 

 どうやら時間は変わらないらしい、後で家に帰ってから詳しく確かめることにする、時間は4時を少し回ったところだ。怒涛の展開に気持ちがついて行かない、サンドイッチを食べながらスマホにまとめていく。 

 食べてお腹が落ち着くと、スマホにまとめた事を見ていく、箇条書きに書かれている画面を見ながら、ぼんやりと”タブレットが欲しいな”と考える、書いたり纏めたりするのにスマホは不便だ、後で母親に相談しようと思った。 

 後はどれだけの量が収納できるのか?、今まで収納していた物をリックサックに詰め替えて収納をからにする、リックを背負いおもむろに歩き出し、石ころを拾いながら収納に入れていく。 

 入りきれなくなったところで出口を目指す、入り口に戻るだけだけど、途中でどのくらいの量を持てたのか確かめたくなった。 

 壁際によって全部の石を取り出してみる、手のひらを下に向けてそこから出るイメージ。「グァララングワラン」と小石が積上がっていく、全て出し終えて”結構入るものなんだ”と感心しながら山積みの小石をしばらく眺めていると。 

 「何をしているのよ?!!」といきなり声を掛けられた。

 「ぎょゎ~~!!」雫斗の悲鳴に声を懸けた本人が驚く。

 「のわぁ~~!!、びっくりするじゃない、脅かさないでよ」。

 百花が怒って言い寄る。

 「びっくりしたのは僕だよ、急に話しかけないでよ」

 と雫斗が怒りをあらわにすると。 

 「壁際でボンヤリしているからじゃ無い、ダンジョンで油断しているとひどい目にあうわよ」

 と百花”こいつ忍び足で近づいたのか?”と雫斗が聞こうとしたとき。 

 「この小石なんに使うのよ?」

 と逆に聞かれてしまった、応え様として置いて行かれたことを思い出した雫斗は、世紀の発見をしばらく黙って居ようと思った。 

 「えっと~~、チョットした実験?」

 挙動不審になりながら雫斗が答えると。

 「小石を山積みにして?!!、何の 実験よ」と容赦のない百花さん。 

 「・・・・んとね、この、・・小石の・・山が、なくなるのが。・・どれ位、かかるかな~~って」

 言い淀む雫斗に百花は疑惑の目を向けていたが、浩三さんが笑いながら。

 「そろそろ行かんかね?」

 の一言でダンジョンを後にすることになった、うまく誤魔化せたが冷や汗をかいた雫斗であった。 

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